ときを超えて 其の2
<前回の続き>
大学、就職と流されるように過ごしていた、26歳の夏のこと。
帰省中の実家で、暇つぶしに広げた地元新聞の記事に目が留まった。
「※※中学の女子生徒(以下Bさん)走り幅跳びで全国優勝」
アカスケと同じ、母校の生徒だった。
忘れかけていた記憶。少しだけ、ほんの少しだけ、複雑な思いがした。
それから数十年後、その女子生徒は教師となっていた。
そのことを知ったのは、アカスケの娘が地元の小学校に入学したときのこと。
保護者宛の学校便りに、見覚えのある女性の名前。ん?Bさん?
思わず娘に聞いてみた。
父「この先生に教わったことある?」
娘「体育を教わった…」
そして娘5年生の春、クラス替えに伴い、新しい担任の先生が決まった。
娘「新しい先生、誰だと思う?」
娘「…. B先生だよ」
全校生徒600名程が通う小学校。
まさかとは思ったが、まだまだ偶然は続く。
(つづく)
ときを超えて 其の1
先日、ある人に1通の手紙を出した。相手はオジサン。
オジサンがオジサンを想って綴った直筆の手紙。想像してほしい...
気持ちが悪いだろう。
長い間、出そうにも出せなかった手紙。
でも届くか分からない。いや、たぶん届く。届いてほしい。
偶然の連鎖が、25年という歳月を、埋めてくれるかもしれない。
世の中、漫画のような不思議なことがある。以下、R40の昔話。
その昔、アカスケという歪んだ少年がいた。どのくらい歪んでいたか、、、
当時、美術の授業で描いた絵が、心に問題ありで、カウンセラーと面談したくらい。
その絵は実家にあるはずだから、いずれUPしたい。きっと笑う。さて話を戻そう。
アカスケが14歳、中学2年の春のこと、ひとりの若い先生(以下A先生)が、遠方の地から赴任してきた。
学校の先生というよりかは、ジムにいる人。元陸上アスリート、ロングジャンパーだった。
それから間もなく、アカスケのヘタレ生活が一変する。
クラブがトレーニングになり、鬼ごっこがスプリントドリルになり、予選落ちが県優勝になった。
帰宅後も、休日も、個別に指導してもらったことを、今も覚えている。
進学後、いずれ全国を意識する頃、アカスケの前に、A先生の姿はなかった。
遠隔地赴任が終了したと聞いた。指導者を失った若者の夢は、はかなく幕を閉じた。
以後、夢中になれるものも見つからなかった。
(つづく)
土に汚れたスパイクと
6月の最終日、再びこの場所に来てしまった。そう、富士の麓の貸し切り競技場。
練習開始後、富士山が雲に隠れ始めると、間もなく雨が降ってきた。
しかし、次月に試合を控えた息子とオトウチャン。悪天候は気にしない。
誰もいない競技場、自由に走れるだけで、親子には十分な時間であることに変わりはない。
雨の中を走り終えて、タオルで顔を拭いながら、まるでスプラッシュマウンテンに乗ってきた直後のような表情で、超気持ちい~とか言っていた息子。
そんな彼に応えるかのように、1時間程で雨が上がり、青空と富士山が再び顔を出した。
さて、跳ぶぞ。
雨で湿った砂場。跳び込めば、普段より砂まみれになることは明らか。
時折、砂場の先に、洗濯機の前で小言を連発するオカアチャンの幻想が見え隠れする。
シャツやスパイクの汚れを気にする息子。やはり見えない何かと戦っている。
やってみせ… オトウチャンは動く。
強い人は状況に左右されない…とか言いながら、最初の1本に覚悟と時間が必要だったことは確か。父も臆病なのだ。
練習を重ねる度に、記録を伸ばしていく子供たちに反して、R40は… 思い描く姿には程遠い。
でも、土に汚れたスパイクと、汗と雨で砂まみれになった身体と、富士吉田のうどんのコシに嘘がないことを、オトウチャンは知っている。
帰宅後、汚れたスパイクと体の砂を洗い流しながら、二人で反省会。
父「調子いいね、今日は何が良かった?」
息子「うどん屋さん」
またスパイクが汚れるまで頑張ろう。
(終わり)
キョウハナニスル
練習のない休日、午前5時。とてつもなく早起きの息子が、私に何か言っている。
「おはよう」ではないのは、すぐに分かった。何て言っている?何?what’s?
目を閉じたまま、その言葉に耳を傾けてみる。
………「キョウハナニスル?」……「今日は何する?」…
息子とオトウチャンの休日の朝は早い。起床して10分後には、目的の地へ車を走らせている。
着替えは? 朝食は? トイレは?
男同士、気の向くままに、多少のイレギュラーに揉めることもありません。
高速を走ること30分、そこは緑の木々に溶け込むように、ホテルや別荘が佇むリゾートエリア。でも息子にとっては、自分だけが知るカブ・クワの集まる木のある秘密の地。
この時ばかりはオトウチャンの前をさっそうと歩く息子。早くあの木を確認したい。そして本日の結果、小さなヒラタとコクワが計14匹。まだ時期が早かったようです。
毎年、その夏に見つけた一番大きな個体は、オトウチャン手により標本に。この制作、とてもグロテスクです。
小さなクワガタは越冬して1年以上、大きなクワガタも夏から翌年の2~3月頃まで生きた個体もいます。飼育係のR40は、これから妻と娘の冷たい視線を浴びながら、長い時間をクワガタと共にします。
今シーズン初のクワガタを手に取りに、昆虫図鑑で覚えたのであろう単語を並べて、私に何か言っている息子。その表情は、ペット専門店にいるときと同じ、喜びに満ちたものでした。
ちなみに、練習中に競技場内にいる虫(死骸含む)を拾って調べる行動については、一応止めるようにと注意はしています。
(終わり)
富士山に向かって
本日の練習場所は、山梨県富士吉田市の北麓公園内にある競技場。
息子とほぼ貸し切り状態です。
この競技場、陸上日本代表の合宿地としても有名です。過去に9.97の人も9.98の人も、そんな人たちが走っています。
アスリートのパワースポットみたいな場所なのか、オトウチャンもあやかりたい。
富士山に向かって走る息子の後姿は、いつもより様になっていて、身長120㎝程の小さな身体が、少しだけ逞しさを増して見えました。息子はこの日、2本目の乳歯が抜けました。
「僕は8m跳びたい」
きっとオトウチャンを喜ばせるために言ってくれたのであろう。
そんな子供の言葉に、足の痛みを忘れて何本も跳躍を続けるR40の姿は、必ずしも見本とはならない。でも、意思が夢を引き寄せる、その可能性を伝えるために、オトウチャンは前を走れる身体をキープしなければならんのです。
結局、午前10時過ぎに練習を開始し、競技場を後にしたのは午後16時。
最後まで「早く帰ろう」とも言わずに、スマホで何十回とオトウチャンの跳躍を撮影してくれた、子供の優しさが身に染みる。
車に乗り込んで1分後、息子は爆睡モードに入りました。
そして只今深夜2:10、その動画を確認しています。
息子のいびきを聞きながら。
(終わり)
青春の1ページ目
先日、上の娘の大会(市総体・陸上)がありました。
今回は応援に行くことも娘には内緒。極力目立たないように、逆側スタンドからサングラスをして偵察です。
マスクと帽子の着用は控えました。
部活動として参加する市総体は、子供にとっては青春の1ページ目。
そこにオトウチャンが必要以上に登場してはならないことは、何となく知っています。
離れたスタンドから鋭い眼差しと心の声を送ります。
それにしても、本当にスタンドからの試技(走幅跳)は遠すぎて見えないっ!
でもサングラスを外すと…世界は変わりませんでした。
R40、ついに視力も衰え始めたか…。
結局、試技終了後にアナウンスで知った娘の記録は3m77。
目標の4mは次回に持ち越しですが、全体2位(16人)で県大会に駒を進めた模様。
その後、私に気付いた娘は、そのことを嬉しそうに話してくれました。
この日、涙する子供たちの姿が、幾度となくR40の目に留まりました。
嬉しくて、悔しくて、溢れる様々な思い。そこに駆け寄る仲間たち。
眩しすぎるその光景は、サングラス越しに大きく見えて目が楽でした。
(終わり)
ブログの時間
3ヶ月前、40歳という節目もあり、折返しの人生で何を求め、何を成したいのか、頭の中を整理するためにブログを始めました。孔子の論語とは真逆の中年です。
誰かに何かを伝えたいとか、お小遣いを稼ぎたいとか、そういう感情ではなく、只々それをすることが、日々の迷いを和らげてくれるような、そんな感覚があったわけでして。
好きなこと、好きな時間、好きな考え...
そんなことを記録するなかで、不思議と湧き出る自己肯定感。深夜のブログは、心の声に耳を傾ける大切な時間となりました。
いつしかブログに星を頂き、昨日は読者さんまで現れました。これは力になります。本当に嬉しい。深夜にも関わらず、パワーが溢れてきます。merrygo001さん同様、私も眠れなくなります。だからダンベルを持ち上げて、気持ちを落ち着かせます。
ブログを書き、迷いが消えて、頑張れる。星を頂き、さらに頑張れる。このサイクルは最高です。
山のように積まれたTACの教材を前にしても.........これは...そのままです。吐きそう。
とりあえずR40、次月に小さな記録会に出ようかと。
22年振りのロングジャンプ、いやショートジャンプです。
(終わり)
自分でやってみる
オジサンを魅了するアクアリウムの世界。静寂と深い青、艶やかな魚たち。
こんなのが自室に欲しい。
小さな海を30㎝キューブに再現するための費用を、トレードでセコセコ稼ぐR40です。
地元のペット専門店。息子と二人、週末の出没頻度は高めです。昆虫や爬虫類を見ながら、ひとりで何か言っている子がいたら息子、優雅に泳ぐ海水魚を前に微動だにしないオジサンがいたら私です。
今ではホテルやレストランの水槽のように、個人宅でも水槽設置からメンテ、魚が死んでしまった場合の保証までを行うサービスもあるようです。でも、愛着を考えると手間暇は惜しめない。お金と時間の考え方に因りますが、オジサンは自分でやりたい男子です。
観賞に満足したら、施設に隣接する釣り堀(鯉)で、1時間ほど遊んでいきます。
慣れた感じの息子は、釣り堀をゆっくり一周し、今日はこの辺りと狙いを定めて糸を垂らします。
ポイントさえ間違えなければ、息子一人でも十分楽しめます。釣れた魚から針が外せないと、泣きが入るときもありますが、それも魚の様子をみながら、一度は自分でやってもらいます。釣りにしても、水槽にしても、手段や方法論を知ることが、成功したときの喜びや楽しみを大きくしてくれるから。
自分の力でできる。
子供たちには、色んな場面でその気付きを得てほしいと願う、オトウチャンでした。
(終わり)
息子の試合 其の1
息子の陸上記録会に付き添いました。前夜、片頭痛に悩まされたオトウチャン。朝からメガシャキを飲んでの参戦です。
小学3年生以下の走り幅跳びに出場し、結果は2m90cmで3番でした。
目標としていた3m台は次戦に持ち越しとなりました。練習では普通に跳べていたことをオトウチャンらは知っています。嬉しいか、悔しいか、今の気持ちを聞いたところ、息子は嬉しいと答えました。自分を知る人たちに褒めてもらえたことが、一番嬉しかったようです。
日頃から、大人になっても、仮に好成績が出せるようになっても、周囲の人たちに祝福してもらえる選手(人間)になろうと伝えていますが、それも覚えてくれていたようです。
親として、指導する側として、試合では子供たちの持っている能力の最大値を期待してしまうのですが、だからこそ、彼等の競技に対する気持ちが、前を向いていることが、大切なことのように思います。それは楽しいとか、嬉しいとか、そうした気持ちを、結果と並行して見てあげることなのかもしれません。あくまで主体は本人であるからと、そう思うのであります。
試合後も、競技場に隣接するサブトラックを、元気に走り回っていた息子。
次戦のために、明日もオトウチャンと楽しい練習です。
(終わり)
運を味方に
今週末に試合を控えながらも、私の練習に付き合ってくれた息子。
ご褒美は、例の「北斗のマンチョコ」1個と650円と少々値が張るドラゴンボールの「一番くじ」(キャラクターグッズが当たるハズレなしのくじ引き)1回。
当たりはしないよと、少々冷ややかな視線で見ていると、
見事に一撃で決めてみせました。
北斗三兄弟と、自身初となるフィギュアを見つめながら、ニタニタする息子。
そのフィギュアを見るたびに、彼のために挑んだUFOキャッチャーの苦い記憶が蘇るオトウチャン。いずれにしても素晴らしい引きの強さ。
余程嬉しかったのか、上の姉に対して残した置手紙がこちら。
独占欲があふれた、なかなかカッコ悪い文章。試合前に大切な運を使ってしまったようで、週末が心配です。
(終わり)