ぼくのなつやすみ
AM5:00、ぼくはまだ夢の中。
あれ?なんか顔がチクチクする。う~痛い…このジョリジョリ感は...。
ふと目を開けるとそこにオトウチャン。そうか、ヒゲ攻撃か。
無理やり起こされたぼく。でもそれが遊びに行く合図だと、すぐに分かった。
とりあえず、虫かごを持って車に乗り込んだ。
オトウチャンはいつものように小さな音でスムース・ジャズを聴き始めた。
そしてぼくもいつものようにもう一度眠りに入った。
また顔がチクチクする。う~痛い…どこかに到着した合図だ。
車から降りると、ちょっと肌寒い。緑の匂いと川の流れる音がした。
そうか、釣りか。
竿を垂らして1時間程すると、急に雨が降ってきた。
それから雨は強くなったり、弱くなったりを繰り返した。
オトウチャンはずぶ濡れになりながら、「喰いがいい」とか言いながら、釣りを続けている。
ぼくは橋の下で雨を凌ぎながら、終わりのときを待った。
計15匹のニジマスをゲットした。
オトウチャンは池に落ちたみたいにビショビショになっていたけど、とても嬉しそうだった。
ぼくは隣接するキャンプ場で、ハサミを使って魚の下処理を手伝った。
帰りにオトウチャンと温泉に立ち寄った。
受付のおばちゃんがずぶ濡れのオトウチャンを見て、少し驚いていたように見えた。
その日の晩、ぼくが釣ってきたニジマスをオトウチャンが焼いてくれた。
「… 美味い …」
そう言うと、オトウチャンはニヤニヤしながらまたヒゲ攻撃をしてきた。
あと9匹も残っている。
(終わり)