マスターズ陸上
やってやれないことはない。
オトウチャンの人生の師は、いつも「やってみせ」てくれた。一番分かりやすい教えだった。
だから自分もそうありたいと、いつも心に思いながら、中年魂を燃やして子供たちと接する。
でも、着実に成長の階段を上がる子供たちに反して、むしろ階段を踏み外し、不格好に転げ落ち、カッコ悪い傷を増やしながら、自分の不甲斐なさに嘆く日々。仕舞いには彼等の若さに対して、嫉妬に近い対抗心を燃やす始末。大人げない。
でも思い出した。師はいつも言っていた。お前には負けないって。
そう言いながら自分の心に打ち勝ってきたのだろう。
情熱は年齢の壁を超えることを、今こそオトウチャンは信じたい。
今日、マスターズ陸上に初参戦してきた。
オトウチャン(R41)などこの世界の重鎮からしたら、いわば子供同然だろう。
Legendの発する柔らかくも鋭い眼光に、競技人生に対する情熱を垣間見た気がした。
そんなことを思いながら会場を歩いていると、譜久里武さんを見かけた。
日本人の40代で100mを初めて10秒台で走り、朝原宜治さんや武井壮さんとリレーでマスターズ世界一になったその人。
沖縄からやってきたヒーローはとても気さくな方だった。
写真を見て思った。
やってやれないことはない…。
とりあえず今日からだ。
(終わり)