息子の試合 其の3
息子、今期最終戦。二種目(100m・幅跳び)にエントリーした。
その日、オトウチャンは41歳になった。
例年通り、特別な何かがあるわけでもない。1年で最も静かに終わる1日である。
そんな私に試合前の息子が言ってくれた。
「パパに自己ベストをプレゼントする」
きっと自信もあったのだと思う。でも結果的にそれは叶わなかった。
競技が終わり、周囲では子供同士のじゃれ合いが始まるなか、スパイクを見つめながら下を向く息子の目には涙が溜まっていたように見えた。
「もう1本、跳びたかった・・・」
その後、クールダウンのために補助競技場に向かった息子。しかし、誰もいなくなった砂場を見るや否や、跳躍練習をし始めた。
この日の悔しさを紛らわすかのように、繰り返し砂場にダイブし続けるその姿が、オトウチャンには自己ベスト以上に価値のあるものに見えた。
勝負はいつでも失敗(敗北)から始まる。
息子にとっても、オトウチャンにとっても、特別な1日になった気がする。
冬季練習が楽しみだ。
(終わり)